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アスベスト問題


 
NMC アスベストとは
 アスベストは,石綿とも言われ、天然に産する鉱物群のうちで,高い抗張力と柔軟性を持ち,絹糸状光沢のある特異な繊維状形態の鉱物の総称で、主成分は珪酸マグネシウム塩です。

 その特性は,燃えない,熱を伝えにくい,薬品に強い,すり減りにくいなどの特徴を持っています。
このため,アスベストは、工業製品から日用品まで、約3000種類の用途に使われ、その約80%が、石綿スレート、石綿パイプ等の建材、断熱材や、ジョイントシート、自動車のブレーキライニング等にも使われました。

 しかしながら,アスベストを吸入することによるアスベスト肺,肺癌,悪性中皮腫等の健康影響がでてきました。しかも、アスベストは、暴露してから(粉じんを吸ってから)20年から30年たち、退職してようやく老後の静かな生活に入ろうとするときに突然、肺がんや悪性中皮腫、胸膜や腹膜のがんなどの恐ろしい健康被害をもたらすという特徴をもちます。このことから、アスベストは「静かな時限爆弾」と呼ばれています。

 日本でのアスベスト消費量は、1960年代後半から増え、現在でも消費量は年間約12万トン(98年)で、ロシアなどとともに世界トップクラスといわれています。
 アメリカでは、50年代初めに使用量が、80万トンでピークに達しましたが(現在は5万トン以下に減少)、それによる肺がん、悪性中皮腫の発生は、2000年ごろには、年間約1万人にも達するだろうと予想されています。日本では、これから健康被害が深刻化してくると考えられるのです。

 しかし、政府はこのアスベストに対して、「労働安全衛生法」で特定化学物質に指定し、吹付け作業の禁止、作業所の排気装置の設置等を定め、「大気汚染防止法」で特定粉じんに指定し、発生施設に対して規制基準を定め、基準の厳守、設置届出、測定が義務づけなどのゆるやかな規制しかしていません。
 しかも、クリソタイル・アスベスト(白石綿)は対象外で、一戸建て住宅の軽量屋根材、壁材、床材などに広く使われています。

 すでに、アスベストは発がん性があるとして、英仏独伊など欧州の13カ国がすでに全面禁止とし、さらにEU(全15カ国)は昨年、遅くとも2005年までに流通、生産を全面禁止にすることを決めています。
NMC アスベスト死2,243人             毎日新聞 2000年2月16日
 アスベスト死2,243人   過去4年間 国内規制立ち遅れ 厚生省調査

 アスベストを原因にする特有のがんの死亡者が、日本で1,998年までの4年間に2243人に上っていたことが、15日までに厚生省の統計資料で分かった。アスベスト関連死の全国実態が判明したのは初めて。
専門家は予想以上と驚き、今後も増える恐れがあると懸念しているが、厚生省内では注目度が低く、白書などで公表していない。

 欧州連合(EU)はアスベスト全面禁止を決めており、立ち遅れた国内規制が問題になりそうだ。このがんは、「中皮腫」(ちゅうひしゅ)と呼ばれ、肺などの臓器を覆っている胸膜や腹膜などの表面(中皮)付近にでき、呼吸困難などの症状になる。
患者の大半は、アスベストを浴びる環境にいたことが確かめられており、アスベスト健康被害の指標疾患とされている。

 厚生省は全国の死因調査で長年、中皮腫について取り上げては分類していなかったが、世界保健機構(WHO)などが統計に使う国際疾病分類を変更したため、95年から統計を取り始めた。その結果、95年500人、96年576人、97年597人、98年570人で、この3年間は連続して600人に迫っていることが判明した。

 アスベストは発がん性があるとして、英仏独伊など欧州の13カ国がすでに全面禁止とし、さらにEU(全15カ国)は昨年、遅くとも2005年までに流通、生産を全面禁止にすることを決めている。日本は一部を禁止しているが、クリソタイル・アスベスト(白石綿)は対象外で、一戸建て住宅の軽量屋根材、壁材、床材などに広く使われている。消費量は年間約12万トン(98年)で、ロシアなどとともに世界トップクラスだ。

 市民団体や労働組合でつくる石綿対策全国連絡会議(古谷杉郎事務局長)によると、欧州の研究では中皮腫の死者が見つかれば、それと同数から2倍の肺がん死も発生しているといわれており、日本のアスベスト関連死は年間1200人〜1800人に達する可能性があるという。同会議は「1日も早く、アスベストを全面禁止にすべきだ」と訴えている。厚生省では人口動態統計課でこの数字を掌握しているが、アスベスト対策を担当している生活衛生局では特に注目されていないのが現状だ。(大島秀利)

今後の表面化懸念    高橋譲産業医科大生態科学研究所教授(環境疫学)の話

中皮腫死者の増加傾向がはっきりしてきた。欧米に比べわが国のアスベストは使用されたピークが遅いので、今後一定の潜伏期間を経た後にもっと危険性が表面化しないか懸念している。

NMC 1995〜99年の5年間で中皮腫による死亡件数2,890件
厚生省統計情報部年報 人口動態統計

1995〜99年の5年間で中皮腫による死亡件数2,890件
1999年の中皮腫による死亡件数は合計647件
昨年より16%の増加、1995年から5年で約3割増加
年度

1995年

1996年

1997年

1998年

1999年

中皮腫による死亡件数

500件

576件

597件

570件

647件

 

腹膜中皮腫

胸膜中皮腫

心膜中皮腫

その他部位

部位不明

合計

合計

647

404

48

5

25

165

男性

489

319

27

4

20

119

女性

158

85

21

1

5

46

NMC 日本のアスベスト状況
ロシアに次ぐ世界第2位のアスベスト使用大国

約12万トン(1999年)のアスベストを、カナダ(半分以上)、ジンバブエ、南アフリカ、アメリカ、ブラジル、ロシア等から輸入
NMC アスベスト禁止は世界の潮流

1983年     アイスランド、アスベスト禁止
1984年     ノルウェー、アスベスト禁止
1985年     スイス、アスベスト禁止
1986年     デンマーク、アスベスト禁止
1986年     スウェーデン、アスベスト禁止
1990年     オーストリア、アスベスト禁止
1991年     オランダ、アスベスト禁止
1992年     フィンランド、アスベスト禁止
1992年     イタリア、アスベスト禁止
1993年     ドイツ、アスベスト禁止
1997年     フランス、アスベスト全面禁止
     カナダ(世界第2位アスベスト生産国)フランスに対し非関税貿易障壁としてWTO(世界貿易機関)に提訴
1997年     ベルギー、アスベスト禁止
1999年     EUは2005年までにアスベスト全面禁止
1999年6月   WTO紛争解決小委員会、カナダの訴えを退ける報告書
1999年11月  イギリス、アスベスト全面禁止
アスベスト禁止鮮明でなかったICFTU(国際自由労連)、アスベスト禁止国際キャンペーン
ブラジル(世界第4位アスベスト生産国)環境大臣、アスベスト禁止意向表明


NMC アスベスト規制法   アスベストの全面禁止を
  愛媛労働安全衛生センターは、アスベスト規制に向けた運動を、石綿対策全国連絡会議に参加する事により取り組んでいます。
最近の世界の動きと石綿対策全国連絡会議の取組みは次のとおりです。


●1999年5月25-28日の4日間連続で6つの省庁と交渉

●日本産業衛生学会への申し入れ
1999年5月1日付けで、日本産業衛生学会理事会、同許容濃度委員会、同石綿許容濃度小委員会宛てに、
「日本におけるアスベスト禁止の実現に向けた要請」を送付。
同学会においては現在、アスベスト粉じんの許容濃度の検討が進められている。

●EUアスベストの全面禁止を決定
5月4日EU加盟15か国中、ポルトガル・ギリシャを除き全面禁止賛成
7月27日欧州委員会承認、8月6日委員会指令(1999/77/EC)発表、20日後発効
EUの新しいアスベスト禁止指令(1999/77/EC)は、遅くとも2005年までに、
加盟各国がクリソタイルを含めたすべてのアスベストを禁止する国内法令を整備・実行することを求めている。
イギリス:99年11月24日から国内における禁止措置の実行を決定

●イギリスのジュリアン・ピート教授ら:ギリス、イタリア、フランス、オランダ、ドイツのデータを基礎にした研究を発表。
西ヨーロッパにおけるアスベストによる中皮腫の死亡件数は、
1998年の5,000から2018年には約9,000とほとんど2倍になり、
今後35年間の合計は25万(アスベストによる肺がんもほぼ同じとして合計死亡件数は50万)にのぼると予測。

●「石綿関連疾患診断・認定のためのヘルシンキ・クライテリア」(1997年1月):
「西ヨーロッパや北アメリカ、日本、オーストラリアでアスベストの使用は1970年代にピークがあり、
約8億人の人口に対し、現在毎年1万人の中皮腫および2万人の石綿関連肺がんの発生が予測されている」

● 世界労働機関(ILO):99年4月に発表の世界における労働災害・職業病の発生状況の推計、
「アスベストだけで、毎年10万名以上の労働者を殺している(労働災害全体の死亡者数は110万名)」

●2000年9月17〜20日にブラジル・サンパウロの西隣りのオザスコ市で国際アスベスト会議が開催され、30か国以上から300名を超える参加者がありました。日本からも石綿対策全国連絡会議の古谷事務局長ら4名の代表が参加。


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